界面活性剤とは

「界面活性剤」は、例えば水と油のように、本来混ざり合わない相性の悪い液体同士を混ぜ合わせる作用をもつ物質の総称であり、その数は数え切れないほど多数存在します。

私たちの生活に身近な液体は、水溶性と油溶性に分類することができます。(水銀などは該当しませんが、、、)
水溶性というのは、水との相性が良く水に溶ける性質のもの。油溶性は、油との相性が良く、油に溶ける性質のもの。

両者は相性が悪く、本来混ざり合いません。そこで、界面活性剤を入れて混ぜると、両者が混ざり合うのです。

界面活性剤のこの働きを活かして、乳化剤、洗浄剤、起泡剤、浸透剤として、私たちの生活の様々な場面で使われています。

それぞれ見ていきましょう。

界面活性剤の働き

乳化作用(乳化剤)

ドレッシングを見ると、2層に分離していることが分かります。
これは、水と油が混ざらないからで、振って混ぜれば一時的に混ざるものの、また2層に分離してしまいます。

そこで、界面活性剤を配合すると、水と油をずっと安定的に混ざった状態を維持することができるのです

食品で例を挙げると、マヨネーズ。
マヨネーズは、本来混ざり合わない酢(水溶性)と油を、卵黄に含まれるレシチン(界面活性剤)が乳化させています。この他にも、ホイップクリーム、バーター、コーヒークリーム、アイスクリームなどに使われています。

化粧品でも、乳液、クリーム等の乳化に使われています。

洗浄作用(洗浄剤)

食器洗いの際、タッパーについた油汚れはなかなか落ちません。
そこで、界面活性剤入りの洗剤によって、油汚れを水になじませ水と一緒に流すことができるのです

界面活性剤の洗浄力は、クレンジング、洗顔フォーム、シャンプー等で用いられています。

水やお湯ではなかなか落ちないメイクも、メイク落としであっという間にすっぴんになります。これもメイク落としに含まれている界面活性剤の効果です。

起泡作用(起泡剤)

界面活性剤の起泡作用により、シャンプー、ボディーソープ、洗顔フォームなどの泡立ちが良くなり、使用感がアップします。

浸透作用(浸透剤)

例えば、セーターを手洗いで洗濯するとき、セーターを水に浸してもなかなかセーターが水に浸らなかった覚えがあると思います。
そこで、セーター用の洗剤を入れると、セーターに水と洗剤がよく染み込んでいく経験ありませんか?

これは、水の界面張力(hideq)によって、セーターの繊維をはじいているためで、界面活性剤の浸透作用の働きによって、水の界面張力を下げることで、繊維と水がなじむようになるのです。

コスメにおいても、美白成分の肌内部への浸透の際、浸透剤として界面活性剤が使われています

美容成分の肌内部への浸透を語る場合、前述のセーター用洗剤の例よりもっともっと小さい、ナノの世界で界面活性剤の分子レベルの働きを見ることになります。

机にこぼれたコーヒーを布巾で拭っても、手についたコーヒーで手がコーヒー色に染まることはありません。
これは肌構造内の油が相性の悪い水の浸入を防いでいたから。

なのに、なぜ、コスメの美容成分は肌内部に入ることができるのか?

それは、本来、水をはじいていた油部分が界面活性剤によって水との相性の良い分子構造に変換され、水溶性の分子を肌内部に通すようになるからです。この仕組みにより、美容成分を肌内部に届けるのです。

従って、「肌バリアを壊している」という見方もできます。

注意すべきは、全ての界面活性剤がこのような働きをする、というものではありません

界面活性剤は山ほどあり、その分子構造もそれぞれ異なります。大きさ、構造も様々なので、肌内部に影響を与えないものもあります。

しかし、肌内部への浸透剤として使われているときは、界面活性剤によって肌の機能が一部変更され(肌バリアが壊され)て、肌内部に美容成分を届けている、ということは念頭に入れておくべきと思います。

界面活性剤と合成界面活性剤の違い

界面活性剤は、(天然)界面活性剤と合成界面活性剤に分けることができます

界面活性剤、石鹸、合成界面活性剤と分ける人もいますが、当サイトでは、全体的な界面活性剤を、界面活性剤と合成界面活性剤と分けることにしました。

<界面活性剤>

石鹸も界面活性剤となります。人類と石鹸の出会いは、紀元前3000年もの太古に遡ります。古代ローマの「サポーの丘」で、神に生贄として焼かれる羊からしたたった脂肪と薪の灰に雨が混ざり、洗浄力を持つ不思議な土ができたのです。

このサポーがソープの語源になったということですが、大昔から界面活性剤は使われていました。

<合成界面活性剤>

合成界面活性剤は、約150年前に人類が有機化学の技術によって生み出した界面活性剤で、市場で多くを占めるのは、大量生産ができる、したがって価格が安い石油由来のものとなります

しかしながら、天然由来の合成界面活性剤もあることには注意が必要で、植物由来100%と謳われている商品に天然由来、例えばトウモロコシ由来のデジルグルコシド(合成界面活性剤)等が含まれていることがあります。

石油から作られた合成界面活性剤の分子構造は、サイズが小さく、直線状であり、それがゆえに肌内部に浸透するこができるのです。例えるなら、”釘”

それに対して、界面活性剤の分子構造はサイズが大きく、複雑な形状をしています。合成界面活性剤が釘ならば、界面活性剤は、”枝の沢山生えた釘”の形状

界面活性剤も合成界面活性剤も界面活性効果を発揮しますが、この形状の違いにより、肌内部に浸透しやすいかどうか、肌に残りやすいか、洗浄力に差ができます

現在のサイエンス技術で、合成界面活性剤ももっと複雑な分子構造のものを、やろうと思えば作れると思いますが、それはコスト、手間の理由からか、やはり市場を占めるのは、単純な釘状の洗浄力の強い、肌に残りやすい(浸透しやすい)合成界面活性剤となります。

合成界面活性剤による肌ダメージ

肌バリアを壊す

角質層は、角質細胞と細胞間脂質が積み重なってできています。例えていうと、角質細胞がレンガで、その周りのモルタルが細胞間脂質となります。

角質細胞には水溶性の保湿成分が含まれ、さらに、角質細胞を覆う細胞間脂質は水分を両側から挟み込む構造(ラメラ構造)で保湿の役割を果たし、角質層全体で水分の蒸発や、外部からの異物の浸入を防ぐバリアの役割を負っています。

ここで、働きの強い合成界面活性剤入りのクレンジング、洗顔フォーム、化粧水、乳液、クリームで手入れをすると、角質層の細胞間脂質を水溶性のものも、油溶性のものも溶かしてしまうのです

合成界面活性剤の強い洗浄力でメイクはしっかりと落とすことができますし、化粧水、乳液、クリームを塗れば、肌表面はしっとりとするでしょう。使用感はとても良いのです

しかし、これは一見の話。

肌内部はというと、合成界面活性剤によって肌そのものの保湿機能が壊され、バリア機能が壊されスカスカな状態になっています。

表面はしっとりとしていても、肌内部は乾燥している状態になります。

バリア機能が破壊されているので、美容成分も肌内部に入るでしょう

美容成分が肌内部に入っても大丈夫なの?

このように肌内部に美容成分を送り届けて良いのでしょうか?

”新技術”、”最先端技術”と謳って、美容成分を肌に送り届けることが謳われている商品であふれています。

でも、

肌バリアを破壊して美容成分を内部に送り込んだとき、

・異物の浸入として体の免疫が働き、炎症がおきない?
・美容成分は肌内部にどれくらい留まる?すぐ排出されない?
・美容成分は酸化しない?

等、美容成分が肌内部に入ったその後のこと、なかなかコスメ企業からの情報では分かりません

各社内部情報としては持っているのかもしれませんが、表に出てこないものだなあと阿部は感じております。

肌の状態が良くなったことを示すデータも、パッと見肌状況が良くなったように思えますが、同じ人間でも日々肌のコンディションは変わるもの。そういう日々のコンディションからくる誤差はデータにどうやって反映されているの?など考えると、肌改善状況でパッケージに印刷されているデータもあまり意味がないようにも思えてきます。

このような視点をもって、使用場面、頻度、をよく考えて上手に美白コスメと付き合いたいものです。

即効性の満足感を謳っているもの、メイク落としの簡便さを謳っているもの、要注意と思います。

便利な使用感、即効性という利点の反面、肌で何が起きているのか認識していない消費者は多いと思います。

阿部は、”今後一切使用せず”というわけではありません。

上記、阿部の抱く疑問に答えをしっかりと出してくれる新技術が出てきたときには、柔軟に取り入れたいと思っております。